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絵本から魔法使い [ちいさなおはなし]

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※今回のおはなしは、前記事「NIGHT FLIGHT」掲載のイラストを小説化したものです。
  お読みになる際には、イラストとあわせてお楽しみください。  by 作者


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ある夏の夜。
ココアは、自分のベッドの上で、学校から借りてきた本を熱心に読んでいました。

皮の表紙の、分厚い本のタイトルは 『魔法使い入門』。
第一章、「魔法使いになる方法」には、魔法使いに必要なものとして、欠かせない2つのアイテムが、挿絵入りで紹介されていました。それは、"とんがり帽子"と"ホウキ"。

"これさえあれば、誰だって魔法使いになれるのです"

2009y07m18d_042602515.jpgココア 「いいなぁ。あたしにも、とんがり帽子とホウキがあればいいのに……」

ココアは、挿絵のページを開いたまま、目をつぶり、自分がリボン付きのとんがり帽子をかぶっているところを想像してみました。すると、どうでしょう。指先に何かが触れる感覚がして、ココアが目をあけると、今思い描いたのとそっくり同じ帽子が両手の中におさまっていました。

ココア 「わ! 思ったことが、ホントになっちゃった!」

よおし、それなら!

ココアは、帽子をかぶると、勢いよくベッドから飛び降り、今度は自分が柄の長い、すてきなホウキを手にしているところを想像してみました。すると次の瞬間、ココアの右手には想像した通りのホウキが握られていました。

ココア 「わ、すごーい! ホウキまで出てきちゃった。帽子と、ホウキ! 2つそろったから、あたしはもう魔法使いだねっ」

ごきげんで一回転すれば、ネグリジェは黒のワンピースに、裸足の足はかかとのあるブーツに早変わり。あっという間に、ちいさな魔女さんの誕生です。

*


もし、魔法使いになったら、ココアはやってみたいことがありました。
それは、ホウキで空を飛ぶこと!

ココア 「でも、ひとりじゃつまんないな……。 ! そうだっ」

ココアは、3階のブランシュと、5階のファッジの部屋に行くと、眠っている2人を叩き起こしました。

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ココア 「起っきろ~!」
ブランシュ 「(耳元で大声を出されて) どわっ。何だ、何だ!?」
ファッジ 「…………?」

10分後、3人は塔の家の屋上に並んで立っていました。
ファッジは、ぬいぐるみを抱えたまま寝ぼけまなこ。
夜風に触れて、ようやく目を覚ましたブランシュが、ココアの姿を見て目を丸くします。

ブランシュ 「なんだぁ!? そのカッコ」
ココア 「えっへっへ~。可愛いでしょっ? (くるり~んと一回転)」
ブランシュ 「はあ……まあ……」

ココアは、ホウキにまたがると、2人に向かって手招きしました。

ココア 「ほら、早く。つかまって!」
ブランシュ 「はぁ? つかまるって、ホウキにか?」
ファッジ 「・・・・・・・・・♪ (ててててっと歩いてゆき、しっぽの部分をぎゅっとつかむ)」

ココアは、2人の両手が、しっかりとホウキをつかまえたことを確かめると、前を向き、声高らかに唱えました。

ココア 「飛べ~っ!」


*


ふわりと足元が地面をはなれ、3人を乗せたホウキはあっという間に夜空に舞い上がりました。
うしろを振り返れば、豆粒みたいにちいさくなった塔の家が、遠ざかっていくのが見えます。

ココア 「わーっ! すっごーい!!」
ブランシュ 「ぎぃやあああああっ~!(絶叫)」
ファッジ 「(もはや声にならない)」

ホウキはものすごい速さで星の海を渡り、やがて眼下には街の灯りが見えてきました。
あそこに見えるのは、いつも行く本屋さん。郵便局に、病院、市場。ブランシュが学校帰りにのぞくCDショップに、ガレット御用達のレストランもあります。箱庭みたいにひしめく街並みは、お人形さんたちが住んでいる世界のようで、ココアは夢中になりました。

ブランシュ 「こら、ココア! あんまりホウキを揺らすなって。落ちるだろー!」
ココア 「あっ、見て! あっちに観覧車が見える。前、遊びにいった遊園地だね、行ってみよ~!」
ブランシュ 「ぜんっぜん聞いてねーな……」

401-kanransya.jpg閉園後の遊園地はひっそりと静まり返っていました。
観覧車にともった明かりだけが、夜空にぴかぴかと明滅しています。
ココアは正面ゲートを過ぎ、巨大迷路がある方向へとホウキを進めました。今なら、迷路を空の上から眺めることができます。迷路のひみつを解くには、絶好の機会ではないでしょうか。

ココア 「あれ? 何これ?」

迷路の上空までやってきたココアは、下を見降ろしてガッカリしました。
それもそのはず、あたりは一面深い霧に包まれ、かろうじて確認できるのは迷路の外枠だけ。

ココア 「なーんだ。これじゃ何にも分かんないじゃない!」
ブランシュ 「て、ゆーかさ。もしここでおれが落ちたりしたら、迷路のど真ん中に取り残されるわけだろ。それって、かなりのキョーフ……(ぶるるっ←寒気)。おい、ココア! さっさと街に戻るぞっ」
ココア 「え~っ」


*

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街に戻ってきたココアたちは、広場にある時計塔のてっぺんに降り立ちました。
時計の針は0時を指すころ。そろそろ帰る時間です。

ココア 「あーあ、もうちょっと遊びたかったな。でも、もしモカが、あたしたちがいないことに気づいたら、大騒ぎになっちゃうもんね」

しぶしぶ立ち上がったココアが、ホウキに乗り直そうとした時でした。
するっ、ホウキの柄が手の中からすり抜けました。つかみ直す間もなく、ホウキはそのまま、広場の石畳めがけて真っ逆さまに落ちていきます。

ココア 「あーーっ!」
ブランシュ 「お前、 どーすんだよ、この、バカ! 帰れなくなったじゃねーか!」
ファッジ 「ホウキさん、ばらばら~」

3人は、呆然として下方をみつめました。ひるるるる~、夜風が3人の背後を吹き渡っていきます。

ココア 「そっ、そうだ! あたしは今、魔法使いなんだから。ホウキぐらい、もう1回出せるもん!」

豪語したココアは、目を閉じ、もう1度ホウキが出てくるように念じました。
けれど、場所が悪いのかあせりがあるのか、一向にうまくいきません。
他の2人の不安そうな視線を感じれば、だんだん頭に血がのぼってきます。

ココア 「もーっ、なんでもいいから、あたしたちを塔に帰してっ!!」


*


どすん。さけんだ瞬間、ココアは自分の部屋の床の上でしりもちをついていました。
近くには、さっきまで読んでいた本がころがっています。ネグリジェに裸足、頭の上に帽子はナシ。
夢を見ていたのでしょうか。ココアは立ち上がり、本を拾い上げました。

ココア 「あ、あれー?」

おふとんの中で、さっきと同じページを開いたココアは、首をかしげました。
「魔法使いに必要なもの」、それは"とんがり帽子"と"ホウキ"。
ところが、その文章の横に添えられている挿絵のホウキは、柄の部分が真ん中でまっぷたつに折れてしまっています。

ココア 「・・・・・・ま、まさかね!」

ココアはぱたんと本を閉じると、ランプを消し、ふとんにもぐりこみました。
目を閉じて、視界が闇に包まれると、なんだか体がふわふわとして、まだ空を飛んでいる気分。
明日の朝になったら、他の2人にも今夜のことを確かめようと思うココアなのでした。

2009y07m18d_040842972.jpgFIN






【あとがき】

どもども。以上、魔女っ子・ココアのおはなしでした。
ああ……、また自分の絵に自分で話を書いてしまった。この、1枚描くと1話書いてしまう癖、ど~にかなんないもんですかね?(でも楽しいからやる)

一応、「童話使い」の能力を出そうと頑張ってみたのですが、う、うーん何か違うような?
結局夢オチだしね; これ、まだココアは自分の能力を自覚していないんです。
ま、今回は思いついた話がこれだったので……「絵本を武器に何かと戦う」みたいなのもいずれやってみたいと思います。いずれ……。

スクショより先に文章を書いたので、途中から手持ちのアイテムじゃ話の展開を表現しきれなくなって写真素材に逃げてます^^;  →お借り先 【2000ピクセル以上のフリー写真素材集】 
こういうのもアリだな~と新たな発見でした。うん。今度から困ったらここに頼ろう。

なんとな~く以前書いた話とリンクさせてみたりもしました。途中出てきた遊園地は、「3つの鍵」で行ったあの薔薇の生垣迷路がある遊園地です。興味がある方はこちらからどぞ♪  → 【塔の家物語】

ではでは♪ (近況:〇年ぶりにカラオケに行って、うっかりPerfumeを歌ったら高すぎて声が出なかった;; ←本日ふつか酔い)
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cotono

すごくメルヘンなお話、楽しかったです♪
夢オチで良いと思います^^
っていうか夢じゃなきゃ現実、ココアちゃん、魔法使い設定になっちゃいますものねw
って、あれっ?、ココアちゃん、自分の能力をって。。?
わ~、これから更に楽しみです!^^
帰ってからの挿絵が変化してるなんてステキv
オムレットさん、きっと童話作家になれると思います^^
ブランシュくんの絶叫が彼らしくて笑ってしまいましたw
実際の写真もnice!ですね^^
by cotono (2009-07-18 23:15) 

ポピ

可愛いお話で癒されました~www
ココアちゃんが、ブランくんたちをたたき起こすトコロがツボでした^^
元気っ子大好きですwww
これから、ココアちゃんが童話使いの能力に目覚めていくまでのお話も期待しております♪
・・・オムレットさんが、ブランくんとうちの子たちをご一緒に、もしかして描いていただけるかも・・・!!!???
も、もちろん、大歓迎です~~~(*` 艸 ´)vvv
お忙しいと思われますので、お時間ある時にゼヒお願いしたいです^^*
楽しみにしております(ノ∀`o)・・・そして私も、よかったらオムレットさん宅のお子様描かせていただきたいなw←へたれ絵だけど、いいですか!?;;
よろしくお願いいたします^^*
by ポピ (2009-07-19 01:07) 

マグリョ

バトンやって下さってアリガトウございました~!
マグリョ的に、魔法少女はステッキを持って変身したりするような感じを思い浮かべていたのですけど、魔女もすっごい好きなので、全然問題ナッシングですよ~v
魔女宅いいですよねb
魔女っ子なココアちゃん、カワイイですvv(*´ω`*)
三角帽やほうきに乗っているところが、魔女っぽくていいですね~♪ これぞ魔女!
お洋服も可愛らしくていいですね~v
夜バージョンもバッチリ見させて頂きました! フフフv
もったいないお言葉もアリガトウございますv///(テレッ)
それにしても、この魔女っ子ココアちゃん、ポストカードで欲しい感じです♪(≧ω≦)

そしてそして、ホントに魔法使いに…!?
お話、楽しく読ませて頂きました~v
また、童話使いなココアちゃんのお話を楽しみにしています~!
by マグリョ (2009-07-21 04:06) 

か-ず

こんばんわ^-^
今回のお話もおもしろかったです^-^
起こされたブランシュさんの画像も、ほんとに眠そう(笑
ココアさんの能力、何かなって気になりました^-^
オムレットさんはイラストもお話も上手で、すごいですね><

TくんとFくんの罰ゲーム、女の子の格好はしないですよね^-^;
ブランシュさんのあのイメージがあって、罰ゲームって聞いたらすぐ思い出しちゃいました(笑
by か-ず (2009-07-21 21:34) 

オムレット

>cotonoさん
今回の話はわたしの色々とツボなものを詰め込んでみました♪
うまくオチがついて良かったです。
これが夢か現実かは、まあ今のとこ曖昧な感じで(笑)
また思いついたらおはなしの中に取り入れてみたいです~。
うわわ、童話作家とは^^ ありがとうございますー。
ブランは相変わらず振り回されております。
ココアとブランの掛け合いもけっこう好きなんで、またやりたいですね~。
ココアがボケでブランがツッコミみたいな関係だと思います。


>ポピさん
はじめは、のんびりおっとりした子だったはずなのに、なんだかだんだん
暴走具合が激しくなってきたうちの子です。むーんおかしいな~。
一応主役なので動かないと話が始まらないというわけもあるんですけどね。
いろいろとネタもたまってるんですが、また1つおはなしの種降臨、ってことで
気長に追っていきたいと思っております^^
わーいわたしもポピさんに描いていただけたらうれしいです♪ 
いつでもよいので楽しみに待ってます^^(わくわく)


>マグリョさん
や、やっぱりバトン持って変身のほうですよね……。
そっちのほうも私的には大好物なので、できたらいつかリベンジしたいです!
夜バージョンといっても、大した変化はないのですけれど^^;、見てくださってありがとうございます~。
ポ・ポストカードですかっ! こちらこそもったいないお言葉っ。
楽しい指定をありがとうございました♪ 
今回のおはなしは、魔女っ子ココアの絵を描いたことがきっかけで生まれました。
感想、うれしいですv ココアにはまた活躍してもらいたいです!


>かーずさん
ブラン=ヘンプクの寝姿は、ほんと、まんま寝起きっぽいんですよね(笑)
わたしも、あのシーンは耳元で叫んでるココア含め、うまく撮れたと思ってました^^
いつも読んでくださってありがとうございます><
絵を描くこととお話を書くことは、昔からやっててすでに当たり前のようなことで、
最近PCで色塗りして公開する楽しさも覚えたので、下手の横好きですが^^これからも続けたいです♪
罰ゲームですね……。いや、わからないですよ。
ファッジが塔の家で、一番尊敬してるのって実はブランなんです。
(どこがいいのか分からないと思いますが^^、あの元気なところが憧れらしい)
ブランがやってるのを見て、真似したくなっちゃうかもしれませんね~。
Tくん、逃げて~(笑)
by オムレット (2009-07-21 23:57) 

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